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昔、この本が出た当時は、小説じゃないし・・・という理由で読まなかったのですが、
最近になって村上春樹さんの作品をいろいろ読んでいるうちに、
この本はどうしても読まなければ!と思うようになりました。
村上春樹さんが、地下鉄サリン事件の被害者に取材したインタビュー集です。

アンダーグラウンド

アンダーグラウンド
価格:1,090円(税込、送料別)



地下鉄サリン事件が起きたのは平成7年3月20日。阪神大震災と同じ年。僕はまだ学生でした。
言うまでもなく、壮絶な被害を生んだ事件です。
当時の報道を見て、多くの国民と同じく、単純に加害者への憤りを感じたのを記憶しています。

でも本書のインタビューは、「あの日、何が起こったのか」を、
各被害者の生い立ちやその日の動きを明らかにし、
何を感じたか、どう行動したか、どのように苦しかったかを
徹底して具体的に明らかにするという目的でなされています。

本書を読むと、実際に事件に遭遇した方にも、加害者に怒りを感じている方、あまり感じていない方、怒りを感じないように努めている方、いろいろな方がいらっしゃるのがわかります。
症状の重かった方、軽かった方、亡くなった方(の遺族)、それぞれ症状の感じ方も違います。
その後の後遺症の出方も違っています。
その日どういう経緯で電車に乗り込んだか、もそれぞれ違います。
・・・被害者の数だけ、被害の受け方、すなわち事件の影響が違うというのがよく分かります。
村上春樹氏の文章ですから、言葉に迫力がありますし、
中でも、亡くなった方の遺族のインタビュー、重い後遺症を抱えた方のインタビューは、
読んでいて身震いがするほどでした。

法律は、たとえば「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。」(刑法第199条)
という抽象的な構成要件に、具体的な事実を当てはめて結論を出します。
具体的事実には、たとえば「人」についてみても、
若い方、年輩の方、お金持ち、お金のない人、男性、女性、いろんな人がいますし、
「殺した」についても、いろんな方法があります。
殺人の動機や理由に至っては、そもそも法律に書いていません。
そのあたりの具体的事情については、いわば意識的に「無視」して抽象化することになっています。
そして、だんだんと、そういう考え方に良くも悪くも慣れてきてしまいます。

本書で村上春樹さんが掘り起こしたのは、法律家はあえて「無視」するであろう事情。
本書は、改めて、法律の適用を考えるにあたって、
どれだけ多くの具体的事情を「無視」していたかを、まざまざと感じさせてくれました。
もちろん法律の適用には具体的事情をすべて汲み取ることは不可能なのですが、
こういった具体的事情、数々の具体的なストーリーが背後に存在することを想像できないといけませんね。

村上春樹さんが取材に1年をかけた労作は、そんなことを考えさせてくれました。
700ページ以上の大作ですが、気付かないうちになんとなく背筋を伸ばして、丁寧に読んでいた気がします。
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2011.01.23 Sun l 本(小説・エッセイ) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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